初っ端からの王道祭り

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「じゃあ、行くよ」 掌に魔力を集め、少年の心臓に流し込む。 神の知識に魔力の解放の仕方もあったのだから、やはり世界のシナリオ通りなんだろう。 この世界に人格というものがあったなら、相当性格が悪いな、絶対。 どうでもいいことを考えていると、ぱきりと何かが砕ける音が聞こえた。 魔力を閉じ込めていた、魔力の膜が砕け散った音だろう。 ぶわりと噴き出した魔力は、少年のかちこちに固まっていた表情を泣き顔に変えた。 「…魔力があったことが、泣く程嬉しいか?」 「…ちが、」 そんなの知ってる。 少年の泣き顔は、とても苦しそうだったから。嬉しい訳ないって、すぐにわかるさ。 「僕の力は、家族の為に封じられてたんですよ、ね…?」 「そうだな。家族をその力で脅かさないように、無意識に抑止していた。それがどうした?」 「じゃあ、じゃあ、」 何で僕は捨てられたの? そう泣きじゃくる少年を、俺は黙って見つめていた。 真実を言えるわけがない。 世界がそれを望んでいたから。運命だった。 そう言って納得出来るほど、人の心は簡単ではないのだ。
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