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「…落ち着いたか?」
「すいません…。もう、大丈夫です」
真っ赤な目で笑う少年は、何処からどう見ても大丈夫には見えない。
それでも本人が大丈夫だと言うのだから、大丈夫だと思うしかない。
「これからどうするんだ?復讐するなら手を貸してあげるよ」
勇者をこちらに引き込めれば、世界を滅ぼすのも楽になる。
これでこいつが縦に首を振るなら、引き込んでやろうと思う。
「…いい、です。家族には、今まで育ててもらった恩がある」
まあ、ふられるのはわかってたけどね。
そんなに簡単に人を裏切れるような奴が、勇者に選ばれるわけがない。
でも実際に見てると、本当に優しいというか、甘ったるいね。
俺だったらさっさと家を出て行くだろうし。力を手に入れたら復讐に行くのだろう。
こいつの家に生まれたらどうだったのか、知らないけど。少なくとも、愛されて育った俺はそう思った。
「じゃあ、これからどうするんだ?まさか此処で野生児と化す?」
「…魔神様」
「ん?」
「僕を、連れて行ってくれませんか」
ぱちり。思わず瞬きをひとつ。何を言っているのかこの少年は。
呆れて溜息も出ない。
「魔神について行こうだなんて、変わった子だ」
「僕を助けた貴方も、変わり者だと思います」
好きで助けたわけじゃないけどね。
空気を読んで言わないけど。
俺を赤い目で見つめる少年を見つめ返し、嘲笑する。
「じゃあおまえは、人を殺せるか?」
「え…」
「俺は魔神だ。人間を排す為に存在している。俺に着いて来るなら、おまえは同族を殺さなければならない」
少年の瞳が、動揺で揺れた。
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