初っ端からの王道祭り

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その顔を見て、確信する。こいつには人間を殺せない。 無理やり殺しをさせて病まれたり鬱られても困るし。 ということは、やはり道は一つなわけだ。 溜息をひとつ落とし、少年の顔を覗き込む。翡翠のような瞳は、未だ涙を湛えていた。 「今のは聞かなかったことにして。他の条件がある。それを飲めるのなら着いておいで」 「…条件?」 「そ、条件。そんな難しいことじゃないよ」 そう言えば、少年は戸惑いがちに頷いた。 思わず苦笑が漏れる。先に条件を聞いたら俺はちゃんと教えてあげたのに。馬鹿だなぁ。 「条件は、一つだけ。俺が人間の前に立ちはだかったら、君も人間として俺を殺しに来ること」 少年の瞳が、大きく見開かれた。 だって、俺の味方になれないなら、敵になるしかないだろう? まあ勇稀が敵だろうがこの少年が敵だろうが、負ける気はしないけど。
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