初っ端からの王道祭り

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「…魔神様は、本当にやさしくない」 「ははっ、魔人様のお供につく条件が易しいわけないだろ?それに俺が優しくないのは今更だ」 で、どっちを選ぶの? なんて、聞くまでもなくわかっているけど。俺の条件を飲めなかったら、一人だもんな? くすりと笑みを浮かべるのと同時に、少年の翡翠が俺を射抜いた。 腹は決まったようだ。 さあ、決まり切った答えを頂戴。 「…この世界の誰よりも強くなって、貴方を殺しに行きます」 哀しげに笑う彼に心を動かされないわけではないけれど、俺は既に戻れない所にいる。戻れたとしても、戻りはしないけど。 「それじゃ、君の名前を教えてくれる?」 「…ノア・シャイク」 「へえ、上流貴族光のシャイク家の御子息か」 「元、ですけどね」 この世界には、貴族というものが未だ存在している。 そのうち光を司るシャイク、闇を司るダークル、火を司るフレイリー、水を司るウォルタナ、風を司るウィンディ、雷を司るボルトニー、地を司るアースマンの七つの家が上流貴族とされている。 特にシャイクとダークルは王族に次ぐ家柄だ。 俺が助けた少年は、思っていた以上に高貴な方だったらしい。 しかし、これからギルドやら学園やら潜り込むのだし、そうなるとそのシャイクの名は邪魔でしかない。 そうなると、することは一つである。 「ノア」 「はい?」 「俺の名前は弥月・三笠」 「ヤヅキ…さま?」 「様はいらない。おまえの名前は目立ちすぎるからな、俺の姓を名乗れ」 ノアは何がなんだかわかっていないのだろうか、目をぱちぱちと瞬かせているだけ。 それも、少し経てば嬉しそうに笑ったのだけど。 「…僕は、家族として側にいてもいいんですか」 「俺を殺せるならね」 「わかってます。…約束、ですから。だから、」 その時まで、兄と呼んでもいいですか? そう尋ねるノアに、心からの笑顔を向けた。 いいよ。君を実の弟のように可愛がって愛でてあげる。 世界の犠牲となった哀れな子を、俺の全てで愛してあげる。 期間限定、だけどね。
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