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波が消え、炎が消え。開けた視界に映るのは悠々と其処にいるアイシス、そして彼の足下で倒れ伏すノアの姿だ。
確かに容赦はなかったが、手加減はしていたようなので怪我は大したことはないだろう。
「…ノアの意識、ある?」
「悪りィな、飛んでる」
悪いなんて思ってなさそうな顔で、アイシスが笑う。
修行なんて傷付いてなんぼ、の彼に言っても無駄だったか。思わず俺の顔にも苦笑が浮かんだ。
「アイシス、ノアのこと部屋に運んどいてな」
「おまえが運べよ」
「気絶させたのアンタだろ」
「俺に手合わせを頼んだのはおまえだ」
「気絶しなけりゃ一緒に勉強する予定だったのにさ、予定潰したくせに」
「気絶した方が悪いだろ、俺は手加減した」
会話はいつまでも平行線。つーかアイシスの顔がマジ過ぎて怖い。むしろキモい。
強面系イケメンが好きな男女(この世界は同性婚が出来る)ならかっこいいだのなんだの騒ぐのだろうが、俺にそんな気はない。
「じゃあコインな」
アイシスが舌を打ち、ポケットからコインを取り出す。
このギルド、どうやら揉め事はコイントスで決めるらしい。何処の幻●旅団だって突っ込んだ俺は悪くない。
「俺裏な」
「なら表な。行くぞ」
アイシスがコインを指で弾いた。裏来い、裏。
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