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「あら、弥月くん。今日はノアくんは一緒じゃないの?」
「こんにちは、アイリスさん。ノアはアイシスが気絶させちゃったんで運んでもらいました」
「あら、またなの?仕方ないわね、アイシスったら」
橙色の腰まである長い髪に、金の瞳の美女、アイリスさん。彼女はアイシスによく似ている。それも当然、彼女はアイシスの双子のお姉さんだ。このギルドのギルドマスターを務めている。
なんでも、アイシスが事務仕事が嫌だとほっぽり出したらしい。ダメな大人だ。
ちなみにアイリスさんはさん付けで、アイシスが呼び捨てなのは、アイシスが駄々をこねたからである。ダメな大人だ。
「そういえば弥月くん、」
「はい?」
「私の年齢を嗅ぎ回っている輩がいるらしいじゃない?詳しく知っていたら教えてほしいのだけど」
…アイリスさんに年齢の話は禁句である。若いのは間違いないのだけど、やはり女性、年齢を聞かれたくはないらしい。
つまり、アイシスに聞いても殺らr…痛い目をみるということである。
「…さあ、俺は知りませんけど」
「そう。わかったら教えてね?」
流石の圧力である。
あんな素敵な笑顔を向けられたら選択肢はYes,ma'amしかない。
俺はいつも作戦は「いのちだいじに」主義なんだ。
「弥月くんはこれから用事は?」
「特にありませんけど…。クエストですか?」
「そう。ノスク港沖に海賊が出たらしくて。お願いできるかしら」
「大丈夫ですよ。魔物じゃないんでしょう?」
「ええ、勿論。それにしても、魔物使いだなんて難儀よねぇ」
はぁ、と溜息を吐く彼女に苦笑を浮かべる。
魔物を殺したくない俺は、魔物使い志望ということにしている。
親切な彼女等に嘘を吐くのは心苦しいが、目的のためには仕方ない。
まぁ、そんなこと思ってないけど。
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