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「今回は本当に助かった。恩に着るぞ、弥月」
「いえいえ、仕事ですから」
「給金は口座に振り込んでおく。あとで確かめてくれ」
では、本当に助かったともう一度頭を下げて、ギルドまで送ってくれたガーネット少佐は城の方へと足を進めた。
なんつーか、いい人だな、本当に。送ってくれるとか紳士だし。女の子とか、ゲイとかはあんな人に惚れるんだろう。俺は女の子だけでいいけども。
少佐が視界から消えたのを確認してから、ローブを脱いで魔法で異次元にしまう。魔法って超便利。そして、我らがギルドの扉を潜った。
「それで?私に対する質問はもういいのかしら?」
「すいまっせんしたああああああああ!!!」
…扉を潜ったら、そこは異世界でした。言葉にするなら、そんな感じ。
視界に入ったのは素敵な笑顔で仁王立ちのアイリスさんと、彼女の足元で土下座する数人の男たち。そしてそれに怯えるギルドメンバー。なんつーか、怯えてるメンツにアイシスがいるあたりアレだよね。
しばらく入り口で困っていてみたのだが、皆アイリスさんに視線は釘づけである。確かに、あれは目を離せないけれど。とばっちり的な意味で。
「……あら、弥月くん。おかえりなさい。仕事はどうだったのかしら?」
「ただいまです、アイリスさん。無事成功しましたよ」
「そう、それはよかったわ。それで、悪いんだけど私は見ての通り取り込み中でなのよ。だから報告書はアイシスに出してくれるかしら」
「了解でーす」
強く生きろと心の中だけで同僚たちに呟き、アイシスのもとへ向かう。あからさまにほっとしている彼に、苦笑が浮かんだ。
「行こう、アイシス」
「あぁ。まったく、賑やかでたまんねぇな、このギルドは」
まったくだと同意を返して、笑う。
リディア学術院入学試験まで、あと、10日。
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