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「最後に聞かせてもらえるか」
「何をでしょう?」
「魔神とは、人外か?」
俺の問いに、神はふわりと微笑した。優しさに溢れた笑顔だった。
「いいえ。魔神とは、人間離れした人間ですよ」
その言葉に、身体から力が抜けた。知らず知らずのうちに身体が強張っていたらしい。
苦く笑いながら、安堵の溜息を吐いた。
俺は、人間である俺が好きだ。人間に生まれたから今の家族や友人に出逢えたのだから。
だから人間を辞めたくなかった。よかった、人間で。
「では弥月くん。覚悟はよろしいですか?」
「ああ」
「リディア王国首都ノスク近隣、『翡翠の森』に飛ばします」
「ははっ、やっぱ最初は森だよな!」
ご武運を。
そう微笑んだ神に苦笑が浮かぶ。
世界を滅ぼす魔神を応援する神様なんて。
でも嬉しくなって、神に礼を言おうと彼の目を見た。彼の優しい瞳を見た途端、意識はずぶずぶと闇に沈んでいった。
頑張る、くらいは言いたかったんだけどなぁ。
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