初っ端からの王道祭り

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声が聞こえて来た方に背を向け、ノスクに向かって歩き出す。 リディア学術院の入学試験は二週間後らしいし、それまではギルドでお世話になろう。基本的に寮があるし、食住の心配はない。 魔物討伐以外のクエストでちまちま金は稼いで行こう。 俺は魔族を守る立場にある。仕事といえど、魔族を殺すつもりはない。 「…ろっ!……だ…!」 「…あ?」 声が聞こえる。 先程のような恐怖に震える女の声ではなく、苛立ちに満ちた男の声。 盗賊だろうか。だとしたら、この世界に元々存在する主人公の救済イベントの可能性が高い。 膨大な魔力をその身に宿すばかりに、大切な人を傷つけまいと魔力を封じる道を選び、魔力のない落ちこぼれと迫害されて来た少年。 その少年が遂に捨てられたか、奴隷商人に売られたか。どちらかだ。 それが、俺の近くで起こっている。つまり、あれだろ神様。 俺が主人公を助けることを望んでいるんだろう。あんたじゃなくて、世界がさ。
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