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兄の叫び声によって我に帰った志穂は「ギャース!」と叫びながら思いっきりクローゼットの扉を閉めた。
中からは魔王の「おい、何をする!開けぬか!」という声が聞こえる。
どうやら幻覚ではなさそうだが、不気味でしかない。
「何な、あれ?」
「知らん!」
混乱する時人と志穂。
その間もずっとクローゼットの中からは声が聞こえて来る。
恐怖が限界に達した志穂は、近くに置いていた掃除機を取り、クローゼットの扉を開けて思いっきり生首に殴りかかった。
ガッと大きな音はするが、掃除機のノズルを持つ志穂の手がしびれはするものの、生首にダメージは無いらしく、痛いやらの言葉が無かった。
「カタッ!」
しびれる手を掃除機のノズルから外しながら志穂は思わず叫んだ。
そんな志穂を鼻で笑いながら魔王が言う。
「フン、当然だ。見たところ、レベル2のお前が魔王の我に敵うはず無かろう」
魔王の物言いにイラッと来た志穂だが、その言葉を自分の頭の中で反芻する。
“魔王”という単語が聞こえたが……と思っていると。
「えっ、魔王?」
時人が魔王の生首をじろじろ見ながら言った。
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