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「そうだ。フフン、聞いて驚け。我は魔王。魔王グレンよ!」
ニヤリと唇の端を上げ、とても偉そうに魔王が言った。
見た目は魔王で間違ってはいないだろう。
しかし、生首というのと、よくゲーム等に出て来る魔王とテンションが微妙に違う気がするので、兄妹はいまいち信じられなかった。
「ホンマやろか?」
「さぁ?でも、このままは困るなあ」
不気味だし、何より邪魔くさい。
どうにかしなければならないのだが、良い案等浮かんで来なかった。
どうする?と兄妹がぼそぼそ話していると、自分が無視されている事に我慢出来なくなった魔王が口をはさんで来た。
「そこの。とにかく我をここから出せ」
「いや、どうやって?」
何の特技も無い二人には無理だ。
時人がつい聞き返してしまう。
「何だ。お前達は魔法を使えんのか?」
「当たり前やろ」
アホちゃうん?と続きそうな、蔑むような声色で志穂が言った。
志穂の頭の中に、自分と魔王が初対面である事はすっかり抜けている。
「なんと……」
志穂の声色より魔法を使えないという、兄妹には当たり前の事に魔王は驚きを隠せなかった。
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