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しばらくちょっとした攻防が続いたが、結局どうする事も出来なかった。
引っ張っても押さえつけても動かない魔王に、志穂も時人も打つ手が無い。
「つーかどうしてこいなんなっとんで?」
おそらく押さえ付けたりする前に聞くべきだった事を志穂が口にする。
「それもそうやな……」
志穂の言う通りである。
時人は納得して頷いた。
それに魔王はまたまた偉そうな態度で経緯を思い出しながら言った。
「あの時、我は勇者との最終決戦をしていた。お互いに後一撃、という所までいき、我は勇者を倒すために最終奥義を出したはずだった」
「だった?」
魔王の態度に苛つきながら志穂が聞き返す。
「……何が悪かったのか。最終奥義は失敗し、いつの間にかこのような姿になっていた、という訳だ」
神妙な顔をしている魔王には悪いが、見ている志穂達からすると笑いが込み上げて来る。
クローゼットの床から頭だけ飛び出ている魔王は、すっかり慣れた今となっては全然恐くなかった。
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