異告情緒

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僕と彼女は暖簾をくぐって外に出た。 火照った頬が冷やされる。 「もう三月なのにね。」 前をいく彼女に話しかける。 彼女はそれに答えることなく言った。 「お酒、どうだった?」 「美味しくなかったわけじゃないけど、思ったよりいいものでもなかったな。」 「そうよね、私も同じ様に思ったわ。」 「お酒を飲んだら大人になれると思ってたけど、そうでもないんだな。」 彼女は相変わらず前を向いて、歩き続けた。 僕は言った。 「僕たちってさ、きっと二十歳をすぎても、幾つになっても何も変わらないんだよ。」 そのとき、店を出てから初めて彼女は振り返った。
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