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「違う。何してんだよ。俺は」  早々に切り上げてシャワールームを出た。  外出許可は簡単下りた。      ◆   ◆  時間になりロビーに降りると文乃は既にいた。いたのはいいが、様子が違っていた。具体的には恰好が違っていて、一瞬足を止めてしまった。 ロビーにいた他の連中は笑いを堪えているのがばればれだった。特に管制の木滑。  水色のワンピースを着た黒髪の小奇麗になった少女――文乃は椅子に座って俯いていた。 「似合ってるな」  声をかけると文乃は勢い良く立ち上がった。赤面顔で口角が上がりそうになってしまう。 「あの……変じゃない?」 文乃は妙にたどたどしく応えた。 「いや。強いて言うならロケーションが変かもな」  しかしこれではバイクに乗れない。いや、ロングスカートというわけではないから物理的には不可能では全然ないが、裾をしっかり押さえているあたり、無理だろう。  俺が所有している足はバイクだけだから困ったと、木滑を仰ぎ見ると、用意していたのか車のキーを投げてきた。彼女の車は2シートのスポーツカーだ。何度か借りたことがある。 手を上げる挨拶でお礼として文乃を連れてロビーから出た。 ワンピースを着た文乃。その前をいく俺はデニムにシャツという普段通りのラフなもの。この類以外に私服としてはほとんど持っていない。 外出時に着るものについての規制は特にないが、女を誑かせようとするパイロットならパイロットというポイントがアドバンテージになる。そのつもりがないのなら外行に特別に買う理由があまりなかった。  対しワンピースを着た文乃。そんな服持ってたんだ、と聞くのは失礼かもしれないと考えていたら文乃は自分で言い出した。
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