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藤堂と翠の様子を物陰から覗いている人物がいた。
そう・・・。
琴音だ・・・。
『早く藤堂に会いたいっ!』と思っていた琴音だったが、まさかこんな場面を見てしまうなんて思っても見なかった。
自分が密偵に行っている間に自分の知らない女子と恋仲になっていたなんて信じたくもない事実だ。
いや・・・もしかしたら私が密偵に行く以前、それよりも、もっと前から恋仲だったのかもしれない。
2人から目を背けたいのにショックが大きすぎて目を反らすことすら出来ない。
心がチクチクと痛む。
やっと平助への想いに気付く事が出来たのに・・・こんなも早く失恋してしまうなんて・・・。
ポタ。
琴音の瞳から大粒の涙が流れ出した。
着物には顎から伝った涙が汚した跡がついている。
今だ目の前で繰り広げられる熱い接吻の数々。
時折聞こえて来る女子の喘ぎ声がこれは現実なのだと訴えてくる。
琴音はギュッと目をつぶると来た道を走っていった・・・。
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