2人が本棚に入れています
本棚に追加
「お嬢様、お急ぎになられてください」
「もうすぐ終わる!」
鏡の前で髪をとかし、“お嬢様”と呼ばれているのは…
「結愛花様!」
「今行く!」
浪川財閥の一人娘、
浪川結愛花。(なみかわゆめか)
現役高校二年生。
「おまたせ高宮」
高宮と呼ばれる黒いスーツを着た男は軽い会釈をし、車の後方のドアを開けた。
「高宮、あなたには本当にお世話になったと思ってる。ありがとう」
「いえ、わたくしも結愛花お嬢様にお仕えさせてもらい、誠に嬉しい限りでございます」
「もうかたぐるしいっ!最後ぐらい気軽にしてよ」
高宮は結愛花の執事としての最後の日だった。
「お嬢様…、そういえば今日の夕方頃に、新しく結愛花様にお仕えする執事がやってきます」
「それならパパから聞いた。なんか頭よくてなんでもこなしちゃうすごい人みたいね…?」
「はい…、私も会ったのですが、容姿もきっとお嬢様は気に入られると思いますよ」
「ふーん」
「ふふっ、楽しみになられてください。お嬢様、それではいってらっしゃいませ。」
「はーい、いってくるね。あ!帰りは友達と帰るからいつもみたいに迎えはいらないよ」
「かしこまりました。」
「あ、高宮!」
「はい、なんでございましょう?」
「これ」
「これは…」
結愛花は高宮に時計を渡した。
「私からのほんの気持ち。もらって?」
「そんなっ…」
高宮は遠慮するが、そんな高宮を見て、結愛花は箱から出して高宮の腕につけた。
「はい!すっごく似合ってる」
「…ありがとうございます。大切に使わせていただきます。」
高宮は自分の腕にはめられた時計をみて、少し涙ぐんでいた。
「ふふふっ。じゃあいってきます。」
「いってらっしゃいませ、お嬢様」
そして結愛花は車に乗り込み学校へと向かった。
最初のコメントを投稿しよう!