第一章 貴重な笑顔

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はぁ…また今日も……。 毎朝の光景で見慣れているものの、当事者となると思わずため息が出てしまう。 教室の左端、後ろから二番目が私の席。 私が登校する時間、そこにはいつも女の子が集まっている。 原因は後ろの席の彼。 ―――小野晴香君。 小野君といえば、校内はもちろん、この界隈の学生なら知らない人はいないほどの有名人。 全国制覇もした我が校のサッカーの主将。 モデル並み、いや、それ以上の端正な顔立ち、均整のとれた体つき。 明らかに他の同級生とは一線を画し、大人びた風貌をしている。 おまけに180センチを超す身長とくれば、女の子が放っておくはずがない。 各学校にファンクラブがあるほどだ。 そんな彼の席には少しでも仲良くなろうと、いろんな女の子がやってくる。 ほおをほんのり染めながら、一生懸命アピール。 恋の力ってスゴい。 私には真似できないや。 みんなの邪魔しないように合間をくぐり抜け、自分の席までたどる着くと、案の定誰かが座っている。
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