第一章 貴重な笑顔

3/8
前へ
/11ページ
次へ
「ごめんね出口さん。ちょっと席借りてるから♪」 クルンとバッチリ決まったまつ毛に大きな目、クラスで一番かわいい平松可奈子さんから 「ね?」 とかわいらしく首を傾げお願いされれば断れるはずもなく……。 「…うん、どうぞ」 力なく笑い、席を譲る。 まぁ、これもいつものこと。 カバンだけ置かせてもらい、HRが始まるまで親友の松井玲奈の席まで向かった。 これもいつものこと。 「陽ちゃん、あの子たちに一回ビシッと言ってやったら?どけろ!って」 「言えへんよそんなこと……。みんな小野君と話したいみたいやろうし仕方ないって」 小野君と席が近くなったら、誰もが経験すること。 隣の席の矢神君だっていつも座れず避難している。 なにも言えない私に、玲奈があきれ気味にため息をついた。 「小野としゃべりたいって、アイツほとんど無視してるじゃん。しゃべってるの全部みずきだし」 みずきとは小野君の親友、桑原みずき君。 クールで無愛想な小野君とは正反対。 明るくお調子者で常に彼の周りは笑いであふれている。 小野君ほどではないが、人懐っこい笑顔と気さくな性格で彼も何気に持てるのだ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加