クリスマスの憂鬱

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高校を卒業してもう10年になる。わたしは逃げるみたいに、都会の大学に進学した。進学して、親友も出来た。彼氏も出来た…。本当に楽しいと思えた。 大学を卒業して、親の援助もなく独り暮らしにも[お一人様]にも慣れた。 だけど28歳にもなれば、周りはウェディングラッシュ。やっぱり30歳迄に結婚したい女心は理解できる。だけどわたしはそれに頷けない… 街にイルミネーションが灯り、頼んでいないのにクリスマスソングが溢れ、街行く恋人達の距離が一層近くなる…この時期が嫌いだ。 「美咲、お待たせ。」 「優奈。」 わたしは、親友の杉崎優奈と待ち合わせをしていた。 彼女とは、大学時代からの親友。4年前に高校時代から付き合っていた杉崎雅也さんと結婚している。旦那さんが忙しすぎてまだ子宝に恵まれていない。だからこうして時間が開くとわたしも気にかけてくれる。 「美咲、まだ政春くんを忘れられない?」 わたしは、フッと頬を緩めることしかできない。 二年前のクリスマスにわたしは大切にしていた恋を失った。 相手は、アパレル系の会社で働いていた頃の元・上司、里見政春。今はきっと他の会社でバリバリ働いている筈。彼とは、就職して会社で上司だった。直ぐに付き合いはじめて22歳から26歳までわたしの大切な人だった。
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