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翌朝、オフィスに入ると、久保部長に呼び止められた。
「高津。」
「はい。あ、おはようございます。」
「ああ、おはよう。今から社長室行くぞ。」
久保部長の口から、社長室と聞いて、とたんに挙動不審になる…だって…入社したばかりの頃、『不良品は必要ない。そう判断すれば、社長室に破棄しに行く』とジョークとは思えないことを言われてたから…
「はい?」
「ご指名。」
「な!なんかやっちゃいましたか?わたしクビですか?」
「身に覚え、あるのか?」
久保部長は、少しだけ目を細めると笑った。
「ありません…。」
「別に、猛獣の檻に呼ばれた訳じゃない。朝っぱらから、あんまり笑わせるなよ。」
気軽な久保部長の背中を、ちびっこのわたしが追いかけた。
「失礼します。高津を連れてきました。」
秘書の山本さんが、柔らかく笑って重厚な扉を開いてくれた。
その奥には、優奈のお父さんの顔じゃない社長と王佐の様に何かを説明している副社長が居た。
「美咲ちゃん♪おはよ♪」
「副社長。おはようございます。」
「おいこら、副社長。威厳、忘れただろ?取りに帰れ。」
「孝志くん。そんなものは、廃棄処分したよ。」
「だったら、ごみ捨て場漁ってこい。」
この二人、兄弟で。実は、副社長がお兄さんだったりする。
部長を飛び越えて、にやける副社長に呆れ気味の社長。部長は、慣れっこなのか笑ってる。まだ、創立者が社長なこの会社は、風通しも良くフレンドリーだ。
「高津にご用が、あるとかないとか?」
「あるから呼んだに決まってるだろ。久保、相変わらず可愛いげがないな。」
「朝っぱらから、社長と副社長のコントを見せられる、苦痛を考慮していただきたいかと。」
「はいはい。久保君は、喰えないねぇ。」
「副社長程ではありませんよ?」
この二人相手に毒舌吐ける、久保部長って一体…。
社長に薦められて、ソファーに座らせてもらった。ふかふかで気持ちいい♪
「美咲ちゃん、ソファー気に入った?」
「はい♪ふかふかです♪」
「高津!」
「はっ!部長、すみません。」
「怒らなくていい。美咲ちゃん相手だと、俺もお父さんな顔しかできないからなぁ。」
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