始まりはいつだって……。

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今日も何もなく普通な1日で終わるはずだったのだが、この日だけはそうは問屋が卸してくれなかったらしい。 いつも通り授業を終え、傾く西日を背に受けて今日も俺は家に帰るため飽きる程見慣れた高校の通学路をとぼとぼと歩く。 俺のスペックは成績普通、運動能力普通、容姿普通、全て普通で埋め付くされている。 ここまでくると気味が悪いがこれも普通なので別に気にしていない。 そう、詰まる所いつだって世の中はほとんど普通。 「あーあ何か普通じゃない事起きねーかなー」 こんな事を言ったのが運の尽きか、小石を蹴った先には車道を渡ろうとしている種類は分からないが黒の毛並みの大型犬。狼にも見えなくなかったかな? そして数十m離れているがトラックが走っていた。 その時までは、あーあいつ渡れるな。そんな風に呑気に考えていた時だった。 あのワンコ突然ブルブルと震え出して車道の真ん中でうずくまりやがった。 トラックとの距離は残り10m位。 そしてまだ俺の方が近い。 気付けば俺は教科書が入ったリュックを放り出して、助けようと走り出していた。 こんな普通の俺でも犬位助けることが出来るはず。 この思いが俺の体を突き動かしていた。 息を切らしてワンコの元に来たものの、 「さあ、もう大丈夫だぞ。ほら脚を上げて……コイツ……中々重い」 腰が抜けてるのか微動だにしないワンコをやっとの思いで抱えるが、クラクションを鳴らされ時既に遅し 「ヤバ、トラックの事……」 ワンコ救出は普通の人間では出来ない事なのだと激しく後悔しながら意識を失った。
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