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「あ……はい」
「何だお前、起きながら寝てたのか」
クスクスと周りに笑われて、辱めにあってしまった。
「……すみません」
「もういい。成績良いからって授業聞かなくても良いってことにはならないからな」
わかってるっつの。そんなこと。
止まってたシャーペンを再び動かし、黒板の文字をノートに写し始める。
成績は決して悪くない。スポーツも、むしろ得意なくらい。
友達も多いしそれなりの恋愛経験もある。でも料理はしない。
どこからか転校してきて、その通学中に運命の出会い。なんてことや。
意中の女の子の家で勉強を教えてもらうなんてことも。
そんな。
運命の出会いだとか。無駄な料理スキルだとか。隠キャラなのにイケメンだとか。高校で一人暮らしだとか。幽霊が見えるだとか。
そんな『主人公気質』はサラサラ無い。
むしろ、それは立石美穂に当たる。
高校一年生の6月に、親の再婚を理由に編入してきた。
可愛いと噂の転校生。
クラスでも目立つ他校の制服。
そしてあの……ヤンデレな感じ。
どこぞのマンガにでもいそうだな。
そしてその主人公な立石美穂と友達になった俺。
充分な脇役具合だこと。
でもそれで良いと思ってる。
目立つのは好きじゃない。
だからさっき先生に頭叩かれて超恥ずかしかった。
だからあんまり、立石美穂に告白されたなんてことは知られたくない。
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