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まず、仕事で海外へ行っていた両親が帰ってきて、最初に言った一言。
「今日から家族が増える。仲良くするんだぞ、健太郎」
父よ。久しぶりですね。
唐突すぎませんか?
そして、もう一言。
「それと、私たちは仕事で今すぐ上海に行かなきゃならないから。またね、健太郎」
母よ。問答無用にスピーディーですね。
それから十分ほど健康的な牛乳と激辛せんべいでティータイムを取り、セレブな会話と新しい家族の説明を早口言葉で勢いよく終える。両親を見送るためにこの高級マンションの屋上にあるヘリポートへと向かった。
また、長く会えなくなると思うと少し目頭が熱くなる。
セレブでリッチな者にしかわからないドラマティックな別れを済まし、自宅に戻ると新しい家族とやらに僕は訪ねた。
「お前、寿命いくつ?」
「お前の子どもの顔を見るまでは死なないさ」
うざい。死ねよ。
今、僕の目の前には汚らしい青髭のおっさんの面をしたアザラシがビニールプールでばしゃばしゃと跳ねていた。醜い。
どうも僕の両親は、東南アジアあたりで人面アザラシが捕まって、売られそうになっているところを助けて家族にしてしまったらしい。助けるならもう少し選んでほしい。
できたら、美少女のメイドにしてくれ、頼むから。
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