一章

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 契理に言われてその方向を見る。そこには空席があり、机の上に男子が座っている。今は来ていないから、座ってもいいという考えだろう。  あそこは、確か和歌ノ原重祇って女子の席の筈だ。クラスではあまり目立つ方じゃない、人と話している所を1日十回も見ない。黒髪ロングの前髪パッツン。そんな女子。  「あら、ま。珍しいな。和歌ノ原が遅刻なんて。あんな真面目そうな人が」  「ん、あれ?宴ちゃんてあれ?和歌ノ原さんと仲よかったの?」  「別に、クラスメートの名前や人間関係くらい覚えてるだろ?なぁ渡」  いきなりふられて驚いたのか、渡は「え?あ、うん」というだけだった。おそらく次の話題でも考えているのだろう。  渡はその後も何か考える様に俯いたままだった。  「でもまぁ、あの人とはなんか気が合いそうな気がするんだよな。なんとなくだけど」
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