鍵(プロローグ)

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鍵(プロローグ)

001  いつからか、僕は鍵を集め始めた。これといった理由はない。と思うが、何か理由があるのかもしれない。まぁ、そんな事を言い出してはキリがないし、別段考える必要もないだろう。そもそも、唐突に始まったこの世界で『いつ』と考えるのはあまりにも不毛というものである。この間姉さんが「なんでそんなに鍵を集めるの?ギザギザしたものが好きなの?」と言っていた。自分だって杭を集めているクセによく言えたものである。そう言ったら『私は理由があるからいいの。』と言ってきた。理由があればいいのかよ。その杭で標本みたいにしてやろうか。ちなみに僕には妹もいる。妹は時計を集めていて、几帳面に一秒ずつズレている。現在28052個所持しているらしい。人の事は言えないが、そんなに集めてどうするんだ。  思考を変えて。まずは、鍵の定義から考えてみよう。  鍵とは、外敵から大事な物を守るもの。掛かる鍵と掛ける鍵。開く鍵と開ける鍵。二つでワンセットだ。ここで導き出されるのは鍵は大事だという事。にしておこう。  僕も鍵の掛け忘れで自転車を三度盗まれた。
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