一等星

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「兄ちゃん!見て!オリオン座!」  弟が指差した先には満天の星空が広がっていた。 「やっぱ神奈川の方が星、綺麗に見えるよ。俺が昨日まで居た東京なんて全然星見えないもんね。ねえ、聞いてる?おい兄ちゃん!」  俺の耳に弟の声は届いていない。俺は星空を見上げたまま、物思いに耽っていた。  ――サキが消えた日も、綺麗な星空だったな。  俺がサキと出会ったのは、丁度一年前。親に無理やり行かされた『星空観察教室』で、彼女は一人で熱心に何かをスケッチしていた。星でも描いているのかな、と思い、横から覗いてみると、彼女は星ではなく、望遠鏡を覗いている俺の絵を優しいタッチで描いていた。  彼女は目が合うと顔を赤くしてはにかんだ。 「勝手に描いてごめんね。」 「いいよ、別に。でも俺、君が描いている様な美形じゃないよ。」  これが一番最初の会話だった。  会話をするうちに、気が合う事に気付いた。解散時刻が近付いた時、俺は思い切って彼女のメールアドレスを聞いてみた。すると、意外にもあっさり教えてくれた。
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