一等星

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 その日は少し有頂天になって、家に帰るとすぐ、メールを送ろうと、彼女のアドレスを登録した。  その時、俺は重要な事に気付いた。俺は、彼女の名前を知らなかった。  一番最初のメールで名前を訊くのは変だと思ったが、その思いを振り切って訊いてみた。  サキ。これが彼女の名前だった。「漢字は?」とか、「苗字は?」とか訊けばよかった、と今では思うが、その当時の俺は満足していたようで、今でも俺は『サキ』しか知らない。  俺はサキとメールをするだけでなく、たまに二人で遊びに行ったりもした。  どちらかが「付き合おう」と言った訳ではないが、付き合っている、という感じになっていた。  出会ってから半年がたったある日、俺はサキと口喧嘩をした。  喧嘩の原因は、俺があげたプレゼントをサキが喜ばなかった、という、今考えてみるとかなり些細な事。  でも、当時の俺は凄く傷付いた。  俺があげたお揃いのブレスレット。店員と一緒に二時間悩んで決めたもの。  それを受け取ったサキはありがとうも言わずに黙って俯いていた。
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