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二等星
目を開くと、何故か明るかった。そして、ぼんやりと揺れる人影が見えた。
「サキ?」
おれは無意識にそう呟いた。
「誰だよ、サキって。兄ちゃん弟の顔忘れたんですかぁ?」
「春!?」
驚いてガバっと起き上がった俺の頭が弟(春也、通称春)の額と思い切りぶつかる。
「痛っ!兄ちゃん石頭!」
「ごめん!ってお前東京行ってたんじゃなかったっけ?」
「ぶつかった衝撃で記憶喪失したのかよ!俺、帰ってきたんだよ、夏休みだから!」
言葉の強さとは裏腹になんか泣きそうな顔をしている弟を見ながら、俺は思い出した。
春は中学校卒業と共に、彼の働く工場がある東京で一人暮らしを始めたんだった。
「ああ、思い出した。ごめん。」
「本当だよ。帰って早々兄は倒れ、ぶつかって俺はたんこぶ、兄は一瞬意識吹っ飛んで俺の事を忘れる。ひでぇ。」
「えっ俺倒れたの?」
「ああ。俺を駅に迎えに来てくれたじゃん?で、その帰り。徒歩三十分もかかるのに兄ちゃんが歩こうぜ、って言うんだもん。で、歩き始めて七分で倒れる。二十三分も背負って歩くの嫌だったからタクシー呼んだ。」
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