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俺たちの会話に唐突に別のやつが割り込んできた。俺もパールも知っている声だ。
振り返って俺は言い返す。
「話題に連関性ってやつがあんまねーみたいだが……形態的に、パールは近い位置づけだと思うんだけどな、レイ」
レイは白く透き通る肌に中性的に整った顔、きれいな短いブロンドの髪をしたエルフだ。緑を基調とした軽装で、弓を背負っている。身長はパールと同じくらいで、男としてはやや低め。
そのレイは涼やかな表情と声で俺の言葉を否定する。
「いいえ、駄目です。悪魔の尻尾はそんな形ではいけません。矢印みたいなあれじゃなければ意味がないのです。それに羽がないのも痛い。それにこれは個人的な意見なのですが、角は巻いているべきだと思うのです」
「へー」
パールは完全に聞き流している。俺は話を変えることにした。
「レイは何でこんなとこにいるんだ?」
訊くと、レイは微笑を浮かべた。人間にとってはまさに魔性といえるような表情だ。
「魔女、悪魔、巫女、メイド、これらの属性を持った美少女が登場するハーレム系のマンガ本を探していました」
ただしいろいろ欠点が多い。俺たちが黙っていると、やつはうっかりしたように付け足した。
「ただし十八禁ものではありません。そこに至らないぎりぎりのところにこそある種の境地があると考えていますから」
「いや、知らんけど」
レイは軽く首をかしげたが、すぐに気を取り直し、
「そういえば王様との話は問題なく済みましたか?」
「ん、ああ。報酬も受け取ったし、まあ問題はない。手紙はまたどっさりあったけどな」
「ではまた、その中から目的地を決めるわけですか」
「そうなるだろうな。ま、どうせもうすぐ夕方だ。今日はどっかで休めばいいだろ」
俺の仕事は便利屋のようなものなのだが、いつのころからか王族や富豪の依頼が増えた。しかし俺としては旅が優先。つまり連絡手段がない。だから一つの依頼主に会うと、そいつが俺に依頼したいやつの手紙をごっそり預かっていたりする。金持ち同士のネットワークはあなどれない。
そして俺は金がなくなってくるとその中から仕事を選んでそこに赴く。そしてそこでまた手紙を受け取って……というシステムに、いつの間にかなってしまっているのだ。
「さて、時間もそろそろだし、もう三人集まってるけど集合場所に行くとするか」
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