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「カラオケでウケ狙いの選曲は失敗のもとですから気を付けたほうがいいですよ」
「唐突に何のアドバイスだ」
「かといって本気で熱唱するのも危険です。ゲイルさんならどちらの失敗談もありそうですが」
「どういう意味だ」
「深い意味はありませんよ。ただゲイルさんがあらゆる場面で浮いているのを日々目撃しているので」
「外見が目立つことは自覚しているが……」
「そう、そこでカラオケの話が出てくるんです。馴染もうとして無理矢理明るく話しかけたり、逆に硬くなりすぎたりして相手に警戒されることがよくあるでしょう?」
「……確かに」
食いついた。適当に言っているだけなのに。
「相手と真正面から向き合おうとするからそうなるのです。会話の始まりに天気の話が多いのは、自分と相手以外のものをクッションにすることで、お互いに警戒する必要のない状況を作れるからなんですよ」
「参考にしよう」
真っ直ぐにそう言うので、僕は目を逸らした。
「まあいいんですけど……あんまり相手に真面目に受け取られ過ぎるのも喋り難くなる要因の一つなんですよね……」
雑談している間に目的地には着いた。
人間一人、エルフ一人、魔族二人のこのメンバーは人目を引く。
歴史上の問題もあって、それぞれの種族が必ずしも仲がいいというわけでもないし、ましてここは辺境の地。
とはいえ宿屋は旅人を迎える商売なため、他の人たちに比べれば他種族にも慣れている。
それでも若干ゲイルさんには引いていたようだが、僕たちは無事宿に泊まることに成功した。
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