第一章 俺とわたしと僕と私

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 城から出ると街を見下ろせる。大きな街ではない。  ここは人間の感覚ならかなり中央から外れた位置にある。街のすぐ南側には樹海が広がり、東側は深い谷間がある。北と西は山。その山の間を縫うような細い道がなければ、ここは完全に孤立無援の土地だ。  丘の上に建つ城から緩い坂を下り、街に入るとまばらに人が行き交っている。  その人たちが時折こちらに目を向けてくる意味は、察しがつく。  珍しいから、ということもあるだろうけど、人間から視線を受けることは多いのでその種類はなんとなくわかってしまう。 「ところで、パール」  と、そこで急に探偵さんが話しかけてきた。 「露出癖でもあるのか?」 「ない」  そっちの意味合いでの視線じゃないし、そもそもそんな格好もしてないのは見ればわかるだろう。目と脳味噌がダブルで腐ってでもいるのか。  すぐに目的のものは見つかった。広場に人だかりがあり、その中心に木製の台と枠があった。横に姿勢のいい立派な白い髭を生やしたおじいさんが、にこにこしながら足元に座る子供たちに何か話しかけている。 「行くぞ」  探偵さんに続いて輪に入る。  間もなくおじいさんは話を始めた。 「この大陸は、丸い。だからそのまんま、円形大陸と呼ばれておる」  おじいさんは紙をめくる前にまずそう言った。 「今日はこの円形大陸が、どのようにして今のようになったのかを話そう」  そして、一枚目をめくると、表題が現れた。 『世界の成り立ち(人間編)』
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