第一章 俺とわたしと僕と私

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 次に出てきたのは畑を耕す人間の絵。 「人間たちは昔、この大陸の各地で小さな村を作って細々と畑を耕したり狩りをすることで生活していた。現在もそうじゃが、昔は人間の天敵が多くいて、発展していけるような状況にはならなかった」  次も同じような構図の絵だった。ただし悪魔のようなものが人間の前に出てきて、人間が驚いている。 「そこに現れたのが、魔族と呼ばれる者たち。彼らは争いを好み、労働を嫌う。だから人間を働かせて自分たちは楽をしようとしたわけじゃ」  魔族から逃げ惑う人々。 「しかし、当時の魔族は知能が低かった。だからいったん捕まえた人間に逃げられてしまったり、魔族同士で戦っている間に人間のことを忘れてしまったりしていた。それでも、人間にとって魔族は恐ろしい存在じゃった」  そこへ、光をまとった真っ白な人間のようなものが出てくる。 「だが、この大陸にいたのは人間と魔族だけではなかった。エルフと呼ばれる森に住む種族がいたのじゃ」 「定番だよなぁ」  探偵さんがぼそりと呟いた。 「エルフは山に住むことの多い魔族が、人間を働かせることで栄え、森を荒らすようになるのではないかと考え、魔族と戦ったのじゃ」  白いものと悪魔が戦っている絵。 「戦いは長く長く続き、その中で次第に魔族は知能を高め協力して戦うようになり、人間は大陸の西へ移動しそこに国を作った。人間が中央からほとんどいなくなると、魔族は働き手として今度はエルフを捕まえようとしたが、森でエルフに勝つことは難しい。長いこと決着はつかなかった」  エルフと魔族の戦いに、人間が戻ってくる。 「人間は争いから離れたことで数が増え、そして西の土地だけでは生活していくことが難しくなった。そのころにはもう文明も栄えてきていて、人間たちは武器を手に取り中央に戻ってきた。そして戦っているエルフと魔族を文明の利器と数の暴力で圧したのじゃ」  喜ぶ人々。 「そして魔族を南東の地へ追いやり、エルフを森に押し返し、人間は中央に居座ったのじゃった。めでたしめでたし」
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