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外見と同じく、落ち着いた雰囲気の廊下を凛に案内され、薫は理事長室の扉の前に立った。
「では、私はここで待っています」
「凛は挨拶しなくていいの?」
「私は時々ですがお話しを伺っていますので、今回は薫様だけで大丈夫かと」
「ん、わかった。有り難う」
薫は頷き扉を軽くノックする。
「七月 薫、参りました」
一瞬の静寂の後、「どうぞ」という落ち着いた声が聞こえてくる。
中に入ると、ヨーロッパ調のデスク前に初老の女性が座っていた。
彼女は薫の姿を見ると一瞬、驚愕に目を見開き、今度は懐古の眼差しで薫を見つめた。
「ああ、貴方が奏さんの…確かに、とても似ているわ」
「…よく言われます」
困ったように苦笑する薫に理事長は微笑みで返す。
「ごめんなさい。男の子に言う事ではありませんでしたね。改めまして、理事長を勤める槇原 結子です。
聖輪舞女学院にようこそ、七月 薫さん」
「はい。色々と至らぬ身ですが、しばらくお世話になります」
「挨拶が堅苦しいところまでそっくりね。貴方の方こそお若いのに大変な役を押し付けてしまって申し訳ありません」
「いえ、最終的に選んだのは私ですから」
「…有り難う。では雪奈さんの護衛、くれぐれもよろしくお願いしますね。あの子の人生はまだまだこれからですから」
「はい。七月の名にかけて、護りぬいてみせます」
薫が力強く頷くと理事長は嬉しそうに目を細めた。
「けれど本当に懐かしい。昔は私も奏さんによく助けられたものです」
「母さんが?」
「ええ。まあ、彼女に関する語りは今でも多いですから、貴方なら色々と耳にする機会があるでしょう」
「そ、そうですか」
「とはいえ、自分の行いを自慢気に吹聴するような子ではなかったから、子供の貴方には話さなかったのでしょうね」
理事長の的を射た見解に薫はクスリと笑った。
「ええ。理事長の仰る通りです。恥ずかしながら母がこの学院に通っていたのを知ったのもつい先日の事ですから」
「ふふ、変わってないのですね奏さんは。さて、本当はもっと語らいたいのだけれどあまり昔話をしていては始業式に遅刻してしまいますね。積もる話しはまたの機会にしておきましょうか」
「はい」
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