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そんな彼に、秋山は懐から一通の手紙を取り出して薫に渡す。
それを見た薫は顔をひきつらせた。
「も、もしかしてこれって…」
「そ、首相からの嘆願書です。ほら、文部省からもちゃんと許可とってありますよ?」
ここにきて薫は激しく歯噛みした。
ロイヤルセキュリティ、一般家庭から一流企業まで幅広く業務を行う私設組織。しかし一部のセクションは警備業務の他、特殊な要人を護衛し、国内では唯一銃火器の使用が許可されていると以前聞いた事がある。
今では政府も御用達の組織で、トップ同士が知り合いだというのならこんな無茶もしてくるかもしれない。いや、現にしてきたのだが…。
「さて、これでこの依頼は秘密裏ながら国からの依頼も同様です。
可哀想な少女の話しを聞き、首相からの依頼であっても薫君は行かないと言えますかね?」
周りからは期待に満ちた視線が向けられる。
― なんて汚いヤツ!
だが、ここまでされて断るという選択はとても薫には出来なかった。
「わかったわかりました!行けばいいんでしょう行けば!!」
もはややけくそになって立ち上がる薫に合わせるようにして秋山も嬉々として立ち上がった。
「そう言ってくれるのを待ってました!こちらでも可能な限りバックアップはしますので」
秋山が隣の女性に促すと、彼女は頷いて口を開いた。
「話しはつきました。凛、入ってらっしゃい」
「はい」
短い返事と共に襖が開き、小柄な少女が入ってくる。
今では少し珍しいおかっぱ頭の下では仏頂面とも喩えられるような無表情がある。身につけているのは赤と白を貴重とした聖輪舞女学院の制服だ。
「彼女は学院で薫君を補佐する柳原 凛です。4月から聖輪舞女学院の2年生に進級し、貴方の補佐にあたります。諜報課に所属しており、まだ見習いながらそこそこ腕が立ちますので何かとお役に立てるかと」
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