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「宜しくお願いします」
型通りの礼をして挨拶する凛に思わず薫も頭を下げるが、
「腕が立つなら彼女に頼めばいいんじゃ…」
と言ってみたところ凛はすぐに首を横に振った。
「いえ、残念ながら私は戦闘の方はまだまだですので。それに護衛対象の宮代 雪奈さんは3年生になります。学年が違ってはいざという時に対処する事が出来ませんので」
ポーカーフェイスのまま正論を口にする凛。
それを見ていた秋山がさて、と手を叩いた。
「じゃあ話しも決まった事ですし次は薫君のお色直しといきましょう!」
彼の言葉に従って横にいた女性が素早い手つきでもう一着、聖輪舞の制服を取り出した。
それを見た薫はビシリと全身が固まるのを感じた。よくよく考えれば、聖輪舞女学院に通うという事はあの制服を着ないといけないという事だ。
つまり、所々にフリルとレースがあしらわれ、腰には大きなリボンのついたあの可愛いらしい女物の服を!
「幸いその髪の長さならウィッグは必要なさそうですね。1ヶ月あればもう少し伸びるでしょうし。顔も可愛いし声も高い。これならちょっとの化粧で誤魔化せそうです。凛、着替えの手伝いを」
「はい」
不穏な事を言う2人に薫は激しくかぶりを振る。
「いや、ちょっと待ってください俺にはやっぱりキツいですって!」
「大丈夫よ。母さんだって着てたんだから」
「性別を考えてください!」
「もう!七月の男なら度胸を決めなさい!」
そしてヒュンッという音と共に崩れ落ちる薫。
母の鋭い手刀が首筋に落ちて意識を刈り取られたのだ。
「さ、今のうちにやっちゃってください♪」
「奥様」
「なぁに凛さん?」
「ご協力に感謝します」
「どう致しまして」
そして奏は女2人に引きずられていく息子を笑顔で見送る。
そんな彼女に秋山が1つの疑問を投げかける。
「しかし薫君、なんで髪切ってなかったんですかね?」
「あれは私が切らせなかったんですよ。だって勿体無いじゃないですか、あんな綺麗な髪をしてるのに」
「成る程、確かに」
あまりに簡単な答えに秋山は声をあげて笑った。
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