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薫は思わず胸元やスカート、ガーターベルトで吊るされたソックス等を確認する。
「私的見解からすれば全く、何の問題もありませんが」
「ぐっ」
それって男としてどうなんだろうか……。
確かに、1ヶ月の特訓の末に薫は女性としての動作を身につけ、最終的には訓練に付き合ってくれた人達全員に「女にしか見えないか」とまで言わしめる事に成功した。(本人には非常に不名誉なのだが)
しかし、ここは違う。殆どの生徒は幼い時からずっと一緒で、それこそ女性なんて毎日のように目にしているのだ。
果たして、そんな中に本当に自分が入っていけるのだろうか。
(ま、見破られたら見破られたでそっちのが良いか)
もっとも、一生消えないダメージは背負いそうだが。
「では参りましょう、薫お姉様」
「はぁ……」
もうどうにでもなれ!と内心で叫びながら薫は凛の横に並び立ち、ついに風紀委員をしている少女の前へと歩を進めた。
「おはようございます、凛さん」
「おはようございます、美智子さん。お元気そうで何よりです」
「ふふ、新学期で久しぶりに皆様と会えるものだから少々興奮しているのかもしれません。あら、そちらのお方は?」
凛と話していた少女の視線が薫に向けられる。
「このお方は私がお仕えしております七月家の薫お姉様です。今年より3年生として外部から編入されました」
「七月 薫です。宜しくお願いします」
そう言って薫は微笑みながら会釈する。
外見だけなら非常に優雅、しかしその実さっきから冷や汗をかきっぱなしだ。現に彼女は穴が空くほどこちらを見つめている。
― そりゃ普通は気づくよね!
「……」
「あの、私の顔に何かついてるかな?」
「い、いえ!失礼致しました。そ、その…お姉様があまりにもお綺麗でしたのでつい!本当に申し訳ありません」
「え、ええと…有り難う?」
何故か疑問形になってしまう言葉。
「いえ、お礼なんてとんでもない!ようこそ聖輪舞女学院においでくださいました」
「申し訳ありません美智子さん。お姉様はこれから理事長に挨拶に行かれますので一旦お話しを切り上げても構わないでしょうか?」
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