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凛の助け船に薫は内心で安堵する。一応のシュミレーションはしたもののやはりこういった会話にはしばらく慣れそうにない。
「あ、ごめんなさい!私ときたらすっかり舞い上がってしまって。お2人共どうぞお通りください」
「有り難う」
「ではお先に失礼しますね、美智子さん」
「はい。今年もまた同じクラスになれると良いですね、凛さん。もしそうなったら薫お姉様のお話し、聞かせてくださいね」
「ええ、喜んで」
最後にもう一度会釈し、薫と凛は校内へと足を踏み入れた。
「はぁ~」
少し歩いた先で思わず溜め息が漏れる。
「…ですから溜め息はお止め下さいと」
とは言われても学院に入るだけでこの徒労。
しかも全然男だと気づかれなかった。2つ合わせてダブルパンチだ。
とはいえ、こんな事じゃこの先やっていけないのも確かではある。
「ごめん。これでなるべく最後にするよ。けど凛、あの子と随分中が良いみたいじゃない?」
「彼女とは1年時に同じクラスでしたので。それに寮でも部屋が隣同士なので」
「成る程ね」
ちょっと無愛想だが、凛にもちゃんと友達がいる事に薫は少し安堵する。ただ、何故この少女がロイヤルセキュリティに身を置いているのかはまだ謎のままだけど。
「そういえば、今日から寮暮らしなんだっけ…」
聖輪舞女学院は基本的に全寮制で、例外が認められるのは通学時間が1時間未満かつ保護者と一緒に暮らしている生徒のみに限られる。厳しい条件、しかもわざわざ親元から通おうという生徒は殆どおらず、聞いた話しでは全校生徒の94%が寮暮らしとの事だ。そして、薫も今日からその中の1人になる。
「周りに女の子が溢れているからといって、くれぐれも暴走はしないようにお願いします」
「あのね……」
「最も、薫お姉様の場合は心配なさそうですが」
冗談のつもりだったんだろうか?なんともわかりにくい。
「さて、まだ始業式まで時間があるし、とりあえずは理事長に挨拶しよう。…一応ここでしばらく暮らす訳だし」
「わかりました。こちらです」
そして凛は凛の案内のもと、ついに校内へと足を踏み入れたのだった。
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