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「北条 純一郎が病気だったのは間違いありません。それはこちらでも確認しましたので。
では、何が問題なのかと言うと北条氏には、現家族の他にもう1つ、違う家族が存在していたのですよ」
「なっ…!」
思わず絶句する薫。
北条 純一郎と言えば常に清廉潔白なイメージがあり、実際テレビの中の彼自信も隠れて他に所帯を持つ人間には見えなかった。
「ああ、一応北条氏のために言っておきますとね、彼もつい最近まではその事を知らなかったんです」
「え?」
「ほら、よくドラマとかにあるでしょう?好きな人の成功の為に自ら身を引く女の人の話し。まさにあのケースな訳ですよ。
当事、北条氏は今ある配偶者とは違う女性と付き合っていました。名前は宮代 麻里子」
「まさか……」
「そう、君に護衛して欲しい宮代 雪奈の母親です」
そこで秋山は今やすっかり温くなったお茶を一口啜った。
「…あくまでも聞いた話しですが、当事の北条氏には才能はあれどそれを実らせる為の金が無かった。そんな彼の前に現れたのが今の奥さんです。名家の出身という事もあり、少なくとも彼女は宮代 麻里子より裕福だった」
「成る程。それで、北条氏の幸せを願った宮代さんが身を引いた、という訳ですね」
「ええ、その通りです。それはもうこっぴどい振り方をしたとかなんとか。けど、この時彼女のお腹には北条氏との子供がいた、という訳ですね」
確かにドラマのような話しだ。但し、現実では全然笑えない類の話しだけれど。
「宮代 雪奈の存在を北条氏が知ったのは1年前。きっかけはこれです」
秋山がファイルを捲ると、出て来たのは聖輪舞女学院の宣伝広告。
生徒が何人か載っており、その中には宮代 雪奈の姿もあった。
「この娘、君と同じように母親とそっくりな出で立ちでしてね。たまたまこれを見た北条氏は一目で彼女の子供だと気付いたようです。
後はまぁ、これもよくある話しです。内密でウチから人員を派遣し、彼女が実の娘である事を突き止めた」
「ロイヤルセキュリティって探偵もやるんですか……」
「一応それに近い部署がありますので。まあそれは置いといて、氏は今更宮代 麻里子と娘の前に顔を出す事が出来なかった。そもそも既にその時から癌にかかっていたようで、出ていったところでどうしようもなかったのかもしれませんが…」
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