始まり

10/15
前へ
/68ページ
次へ
「あず、どうかした?」 翼が心配そうに覗き込んでくる。 その髪が触れてくすぐったい。 「…なんでもないよ。」 気味が悪い。 低くどこか妖艶のある男の人の声のような…。 「翼、あっち見にいこ!」 壬生塚と書いてある赤い橋が架かっている方を指さす。 「あ、あぁ。」 翼の腕をがっちり掴んで足を速める。 じっとしていられない。 頭の中で警告が鳴るように、この場所は何かあると直感する。 ―――ようやく、思い出した? 「ひっ!」 橋に差し掛かったところで、声がはっきりと聞こえた。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

23人が本棚に入れています
本棚に追加