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そうして小傘が泣き止むこと数分。
落ち着いた彼女は改めて柊司に自己紹介をした。
「わちきは多々良小傘、化け傘だよ!」
「やっぱり妖怪なのか、こんなに可愛いのに……」
「うーん、可愛いかぁ」
微妙な表情をする小傘。
柊司が首を傾げると、彼女は突然立ち上がった。
「そういう台詞はあんまり嬉しくないよ」
そう言って飛び跳ねながら階段を登る小傘に、柊司は問いかける。
「なら、なんて言ったら嬉しいんだ?」
その言葉に彼女は器用に一本足で回転し、柊司の方を向いた。
舌を出し、人を小馬鹿にしたような顔で言う。
「妖怪こわーい、って言ってくれりゃ、本望さ!」
そう言い、彼女はまた階段を登っていく。
柊司も響子も、その後ろ姿を黙って見送った。
「さて、掃除しちゃいましょう」
「……ええ」
少し清々しい気持ちになり、柊司は箒を握り直した。
「じゃ、私は下の方を掃くので、柊司さんは上の方を掃いてください」
そう言ってお経まがいの鼻歌を歌いながら下へと降りていく響子。
その更に下、階段の始めの場所の藪が、小傘の時のように揺れる。
「(ん?小傘さん、また脅かしに戻ってきたのかな?)」
そう思った柊司は彼女が登って行った階段を振り向いた。
するとそこには階段を登り終わり境内へと入っていく小傘がいた。
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