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一方、柊司は未だ藪の中を疾駆していた。
足を捕られ、あちこちを木にぶつけながら走った結果、身体が悲鳴を上げている。
それだけでなく、スライム状の化け物が張り付いた部分が徐々に爛(ただ)れ始めていた。
「くっそ、剥がれねぇ……ってぇ!?」
爛れた皮膚から血が滲み出す。
痛みに涙を溜めながらも、彼は走るのを止めなかった。
理由は一つ、命蓮寺の人たちに迷惑をかけないためだ。
こんなことになっている以上、既に迷惑をかけていることは彼とて重々承知している。
しかし、
「コイツを一人でなんとかしないと、誠意になんねぇかも知れないし、なぁ!」
そう言って身体中に張り付いたスライムに打撃を与えるべく樹木に体当たりを仕掛ける。
骨が軋むほどの特攻に木が揺れた。
だが、肝心のスライムは離れるどころかますます身体に食い込む。
「っくしょぉぉぉぉぉお!!」
咆哮が虚しく響く。
そんな柊司の耳に清らかな流れが囁く。
「川か?それも、大きい!」
川のせせらぎを聞き取った彼は、そちらへと駆け出した。
藪を掻き分け、音だけを頼りに進む。
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