一日目 船頭と川流れ

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何故、彼は川の存在に反応したのか。 それは、身体に張り付くスライムの特徴のためだった。 この化け物、極少量だが絶えず酸性の液を出しているのだ。 彼の皮膚が爛れたのも、そのせいだった。 柊司は水による希釈(薄めること)を謀ろうとしているのである。 「…………、あった!」 目の前が拓け、広い河が姿を現す。 流れの音と目視により、柊司はこの河の深さを予測した。 この河、岸辺は浅いが、中央に行くに従い徐々に深くなっていく。 柊司はそのままの勢いで河へと入った。 「つめってぇ!でも、これなら……」 彼は意を決し、河の中央へと向かっていく。 そして、腰まで浸かったところでしゃがみ込んだ。 ついでにスライムを剥がしにかかる。 しかし、スライムはますます彼の身体に食い込んだ。 爛れた皮膚に水が染み込み、かつ圧迫され、柊司は嗚咽を漏らす。 「ぐぅ、これも駄目かよ!って言うか……」 悪化している。 柊司はその事実に気付き始めた。 この液体生物は寄生虫の如く自分を食らおうとしているのだと。 力も策もない彼に、生き残る道は無かった。
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