一日目 船頭と川流れ

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三度(みたび)、村紗が叫んだ。 「お前、どうしてそんな態度とるんだ!」 「俺は疫病神ですよ!記憶はないけど、それは分かる!」 柊司も叫んで答える。 しかし、その声は先ほどより小さい。 村紗は、自分と彼との距離がもっと離れたことを嫌でも感じた。 「ひねくれ者の俺が、良いことに関わるハズがない!厄介事しか運んで来ないんですよ!」 「そんなこと――」 ない、そう彼女が言おうとした時だった。 対岸から白蓮、そしてナズーリンと星が駆けつける。 村紗の表情が少しだけ緩んだ。 「柊司!」 「構わないで下さい!」 白蓮にさえも拒絶の対応をとる柊司。 しかし、彼女は彼よりさらに冷静だった。 「ムラサ、術で網を張ります。彼がかかったら――」 「すぐに助けます!」 その言葉にコクリと頷き、白蓮は呪文を唱え始める。 両手に光る網が生成され、それを彼女は柊司よりも下流に投げた。 河に架かる橋の如く、網が横に広がる。 「うわぁ!?」 見事に柊司が引っかかる。 ようやく追いついた村紗が、彼に近づいた。 「観念しろ、クソ坊主」 「こいつ、まだ生きてますよ?村紗さんに襲いかかる可能性はゼロじゃないんです!」 「知るか、そんなこと」 吐き捨てるように言って、彼女は柊司の腕を掴む。 スライムは彼女に張り付くことなく、ただゴムのようにグニャリと変形した。 「もし、こいつが襲って来ても、あたしはこの手を離さないからな」 「……なんで」 「そりゃ、お前が新しい仲間だからさ」 ニカリと笑い、村紗は柊司を対岸へと引っ張って泳いだ。
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