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幻想郷、命蓮寺。
忘れられた者達の世界に唯一存在するこの寺の朝は早い。
日の光が僧坊(僧の寝床)に入ると、一人のた少女が飛び出した。
その見た目はおおよそ、普通ではない。
犬のような耳と尻尾、緑色の髪。
彼女の名は幽谷響子、命蓮寺に住み着いた山彦の妖怪である。
響子は箒を手に取ると、大きく息を吸い込んだ。
「おはっよーございまーす!」
大声が寺に、幻想郷に響く。
彼女はそのまま本堂へ、白蓮の部屋へと向かった。
騒がしくないよう、静かに戸を開ける。
「白蓮さん、おはようござぃ……ます?」
目の前では白蓮が寝ている。
それはいつものことで、響子には何も問題はない。
問題なのはそこに『別の』存在がいることだ。
少年が、白蓮の隣で寝ている。
「ん、おはよう、響子」
先ほどの響子の声で、白蓮が目を覚ました。
彼女は軽く伸びをして、起き上がろうと手を着く。
その手が少年の胸に触れた。
「え……?」
思わず手の方向を見る白蓮。
その顔がみるみる紅く染まる。
「き、きやぁぁぁぁぁあ!?」
山彦よりも大きな声が響き渡った。
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