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そんな二人を、白蓮の柏手(かしわで)が我に返した。
「じゃあ、紹介も終わったし、あなたには早速、仕事をしてもらうわ」
「雑用、でしたっけ?」
「ええ、まずは響子と一緒に寺の掃除をお願いします」
「ええ、私ですか!?」
突然、矛先が自分に向き、慌てる響子。
そんな彼女に白蓮は優しく微笑みかける。
「今まで、あなたに掃除を任せっぱなしだったからね。彼が手伝えば、少しは楽になるんじゃないかしら?」
「白蓮さま……」
思わず涙ぐむ響子。
彼女は目をこすると、柊司に向き直った。
「では柊司さん。よろしくお願いします」
「いえ、こちらこそ。よろしく願います、響子さん」
「あ、響子でいいですよ?口調もタメ口で構いません」
「でも、年上ですよね?」
「ここじゃ歳なんかあって無いようなもんですから。敬称はその敬う人にしか使いませんよ」
「それでも、です」
そう言って笑う柊司。
つられて響子も笑う。
そんな二人を遠巻きに見つめる村紗と一輪。
「律儀だねぇ。あたし、あいつ気に入ったよ」
「あなたね、姐さんの部屋に忍び込むなんて不届きな輩だよ?」
「なに一輪、羨ましいの?」
村紗が茶化すと、その腹に肘鉄が食い込む。
そんな命蓮寺の茶の間を、外から雲山が見守っていた。
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