山彦と門前掃除

3/7
前へ
/20ページ
次へ
そんな二人を、白蓮の柏手(かしわで)が我に返した。 「じゃあ、紹介も終わったし、あなたには早速、仕事をしてもらうわ」 「雑用、でしたっけ?」 「ええ、まずは響子と一緒に寺の掃除をお願いします」 「ええ、私ですか!?」 突然、矛先が自分に向き、慌てる響子。 そんな彼女に白蓮は優しく微笑みかける。 「今まで、あなたに掃除を任せっぱなしだったからね。彼が手伝えば、少しは楽になるんじゃないかしら?」 「白蓮さま……」 思わず涙ぐむ響子。 彼女は目をこすると、柊司に向き直った。 「では柊司さん。よろしくお願いします」 「いえ、こちらこそ。よろしく願います、響子さん」 「あ、響子でいいですよ?口調もタメ口で構いません」 「でも、年上ですよね?」 「ここじゃ歳なんかあって無いようなもんですから。敬称はその敬う人にしか使いませんよ」 「それでも、です」 そう言って笑う柊司。 つられて響子も笑う。 そんな二人を遠巻きに見つめる村紗と一輪。 「律儀だねぇ。あたし、あいつ気に入ったよ」 「あなたね、姐さんの部屋に忍び込むなんて不届きな輩だよ?」 「なに一輪、羨ましいの?」 村紗が茶化すと、その腹に肘鉄が食い込む。 そんな命蓮寺の茶の間を、外から雲山が見守っていた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

25人が本棚に入れています
本棚に追加