1.はじまり

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 ――大学の講義室だった。随分珍しいなぁ、と感嘆しつつ適当な場所に座った。間もなく式は始まった。扉から一人の男が出てきた。彫りの深い顔で、モミアゲから髭まで繋がっている。 いよいよ始まる、と俺は多少緊張した。多少。 「あー、社長の破戸竹刀(ぱっとしない)だ」 いきなり社長でてくんなよ。司会とかないのか。 「いいか!」突然大声を上げた。勿論マイクはあるが、声がでかすぎでスピーカーからは雑音混じりで聞こえる。 「この破戸商事に入ったからには……入ったからには……」  うるせーな…… 「入ったからには……」 台詞忘れるなよ。てか――、俺は横を「入ったからには……」見る。  寝るなよ。 「入ったからには……」一人は机に突っ伏し、もう一人は仰向けで寝ている。てか本当うるせーな。早く思い出せよ。
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