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「おとうさん……おかあさん……」
埃が掛かったノートのページに張り付けられた新聞を、小さな男の子がジーッと見つめている。
誰かを探すように、少年は新聞を見つめていた。
「真護。そんな所で何をしているんだ?こっちに来なさい。」
「おじいちゃん…おばあちゃん。これ……」
少年の祖父なのだろうか、真護を見付けた祖父はゆっくり歩いてくるも、真護が持つノートを見て表情が固まった。
「真護……それ、何処から持って来たんだい!?さあ、こっちに渡しなさい!」
祖母は、子供が持つノートを見て慌てて渡すように話す。
「うん……。」
ノートを渡した時の、祖父と祖母の顔が少し暗くなっていた。
「……ねぇ、おじいちゃん、おばあちゃん。お父さんとお母さんは、天国で元気なのかな?」
祖父と祖母の表情が固まり、やがて、悲しそうな表情へと変わっていく。
自分達の息子夫婦がこんな幼い子供を残して逝ってしまったのだから。
何故、あの日にあんな事故が起きてしまったんだろうか…。
何故、あの日に限って息子夫婦達を出掛けさせたのだろうか…。
「真護ちゃん……ごめんね。辛い思いさせちゃって…ホントにごめんね……。」
「ううん…僕は大丈夫だよ。僕が、おじいちゃんとおばあちゃんを護れるように、皆を護れるように、『いちにんまえ』になるんだ。」
真護の言葉が胸に刺さる。
励ましてくれた事よりも、自分達を護ると言った事が何より嬉しく、それが何よりも真護に不甲斐なかった。
「……ごめんね……ごめんね…。」
真護は自分を抱きしめた祖母と、立ち尽くしながらも顔を下に向けていた祖父の顔を、ただただ見つめていた。
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