prologue

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楓さんはとても柔らかなでも、どこか悲しげな表情で口を開いた。 「いるよ」 たった一言、そう答えてくれたの。 その表情がさっきの話をしている時と同じで、本当につらそうだったから、わたしはいけないことをしたと思った。 でも、楓さんはゆっくり始めたの。 「千冬ちゃんが話してくれたんだから、あたしもきちんと話さないとね。あたしが好きな人はね、ほんとに近くにいるの。ほんとに近すぎて、ひとりの女の子として見てもらえないくらいに。だから、あたしはずっと……、もうずっと片想いしてるよ。あはは、きっとこんなあたしの気持ちなんて絶対、あのバカで鈍い人は気付かないし、この先ずっと死ぬまであたしをひとりの女の子として好きになってくれる事なんてないと思う。でもね、それでもいいの。好きだから。近くにいられたら嬉しいの……」 とちゅう、本当につらそうな表情をしていた楓さんだったけど、話終える頃は笑っていた。 その綺麗な瞳から大粒の涙をいっぱいこぼしながら笑っていたの。
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