episode.1 だからこそ

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「入るね」 そう言って部屋に入ってきたのは楓だった。 手にはトレイがあり、お揃いのティーカップがふたつ乗っている。 楓はそれをローテーブルに置き、口を開いた。 「お茶淹れてきたから、一緒に飲も?」 なんてできた妹なんだろうか。 わざわざ兄の部屋にお茶を持ってきてくれるなんて。 しかも、お茶請けにカステラまで。 一緒に飲もうなんて可愛いではないか。 「ありがと」 俺は携帯の画面を消し、身をおこしてベッドから降り、ローテーブルの前に腰を下ろす。 「ん。あたしが雄一と一緒に飲みたいだけだから」 楓はそんな事を言いつつ、俺の前にソーサーに乗せたティーカップをゆっくりと滑らせるのだった。
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