episode.1 だからこそ

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「雄一とお話ししたいから……手はどけるけど、大きな声出さないでね……?」 色々と思うところのある俺に、尚も甘い声と上目遣いを向ける楓に、またコクリと首肯すると、楓は柔らかな手を俺の口元から退けた。 「……で、なに?今のこの状況?」 そんな楓に尋ねてみる。 「……だから、雄一とお話ししたいなぁって……」 相変わらず猫撫で声で答える楓だが、俺が聞きたいのはそうではない。 「……お前は、寂しくて話したくなったら誰にでも抱き付くのか……?」 とりあえず、率直な意見を楓にぶつけた。 「……ばか!!そんな訳ない!!あ、あたしは……あたしは……雄一が……雄一だから……」 少し楓が心配になる俺に、心配の種である楓は涙を浮かべて言葉をつまらせる。
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